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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

03 木曾の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页

青空文庫

すさまじい一合二合! そこでガッキと鍔が食いあったが弦之丞、坂の下寄りへ廻っていたので、柄手をねじって、ひッぱずした。

「あっ!」と、その時、孫兵衛のほうに、不意に息が抜けたのは、ヒタ押しに上方から鍔競を押す気ごみであったらしい。かれの上体は弾みをくって、坂を斜めに泳いでしまった。すると、

「おのれッ」と、また一人。

小高い所から飛び下りて、片手かぶりの大刀を、そのまま梨割りにふるって落してきたのは、殿をしろと孫兵衛にいわれていた、天堂一角。

いつまで周馬の現われぬのに業をにやして、もう我慢ができないというふうに、片手上段で飛び下りたが、早くも弦之丞、剣下を交わしてしまったのみか、裾を払って、その隙に、一方の低地へ駈け下りた。

そこは最前、弦之丞がここへ来る前に、三人を初め原士のすべてが、たむろをしていた草原で、わざとそこへ走ったのは、なお闘うべく地相を選みなおしたものか。

かれが平地へ立ちなおったのをみると、草原の隅に身を屈していた旅川周馬、ムクムクと身を起こして、しずかに近くへ近くへと這いまわって行った。――そのまに一角とお十夜は、さらに猛然と、切ッ尖をならべ、たとえどんなことがあるとも、今夜こそは弦之丞を刺しとめずにはおかぬという気勢を示した。