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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
03 木曾の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页
して、わしに告げたいこととは」
「江戸表におらるるそこもとの御息女お千絵殿という方から便りをもって、唐草銀五郎というものが、阿波へ入りこむべく大阪表までまいりました」
「オオ、さては、唐草が娘の消息をもって阿波へまいりますとな?」
「さ、ところがその銀五郎は、目的の途中で、あえない最期をとげたのでござる。場所は、大津の禅定寺峠。――某もまたその時に、阿波の侍のために捕われて、とうとうここへ送られてまいった。しかし、御落胆なさるな、まだ安治川屋敷に押しこまれている当時、手前の妹の鈴が探ったところによると、われらと同腹の者で天満組の目明しをしている万吉と申す者が、法月弦之丞という人の力を借りて、再度、阿波へまいる支度のために、お千絵殿を尋ねて行ったということでござります……」
「はて? ……法月弦之丞と申せば、わしが江戸表にいた当時は、まだ十四、五の美少年で、夕雲流の塾へ通っていた大番組の子息――。どうしてそれが、娘の千絵を存じているのであろう」
「二人は恋の仲だそうでござる」
世阿弥は不思議な気がした。かれが、夢にみるお千絵は、いつも彼が江戸を去った時のおさないお千絵であったから……。