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たかをもらいそこなったはなし
鷹を貰い損なった話
寺田 寅彦
「行動 第二巻第八号」1934(昭和9)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,283 字 · 3 页
小学時代の先生方から学校教育を受けた外に同学の友達からは色々の大切な人間教育を受けた。そういう友達の中にも硬派と軟派と二種類あって、その硬派の首領株からはだいぶいじめられた。板垣退助を戴いた自由党が全盛の時代であったので、軍人の子供である自分は、「官権党の子」だという理由でいじめられた。東京訛が抜けなかったために「他国もんのべろしゃ/\」だと云っていじめられた。そうして、墨をよこさなければ帰りに待伏せすると威かされ、小刀をくれないとしでるぞ(ひどい目に合わせる)と云っては脅かされた。その頃の硬派の首領株の一人はその後人力車夫になったと聞いたが、それからどうなったか一度も巡り合わずそれきり消息を知ることが出来ない。
そういう怖い仲間とはまるで感じのちがう×というのが居た。うちは何商売だったか分らないが、その家の店先に小鳥の籠がいくつか並べてあった。梟が撞木に止まってまじまじ尤もらしい顔をしていたこともあった。しかし小鳥屋専門の店ではなかったような気がする。
その×は色の白い女のように優しい子であったが、それが自分に対して特別に優し味と柔らか味のある一風変った友達として接近していた。