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おうごんをあびるおんな

黄金を浴びる女

野村 胡堂

「オール読物」1933(昭和8)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,350 字 · 22 页

青空文庫

「旦那様、危のう御座います」

何処から出て来たか、中間姿の男が立塞がります。

「何んだ、権次か、曲者が入って居る、お前は引返して皆んなを起して来い」

「旦那様は?」

「俺は中へ入って見る」

後藤三右衛門、充分胆が据って居ります。

「それは危う御座います、旦那様」

権次は尚おも蔵の戸前から離れようとしません、此処から三右衛門を入れたら、何んな事になるかわからなかったのです。

「えッ、退け退け」

併し三右衛門はもう我慢をしませんでした、権次をかき退けると、樫の板戸を開けて、中へ、

「あッ」

中は淡い灯に照されて、黄金の雨、黄金の洪水です。

「己れッ、売女」

黄金の洪水を禦して、あらゆる狂乱を続けて居るお駒を見ると、三右衛門の手槍は、サッと伸びました。

「あッ」

薄桃色に上気した美女の肉体が、黄金の山の上へ崩折れると、胸から赤い血潮が、滝の如く吹き出すのでした。

「権次、権次さん」

お駒はそう言って、顔をあげましたが、土蔵の外に、何やら物の気配を感じると、又ガックリ血潮の中へ崩折れて、其儘息は絶えて了いました。

黄金の音、――続く絶叫、自分を呼ぶ声などを聞いて、権次は何遍か蔵の中へ飛込もうとしましたが、思い直して一散に門の外へ飛出して了いました。