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おうごんをあびるおんな
黄金を浴びる女
野村 胡堂
「オール読物」1933(昭和8)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,350 字 · 22 页
お駒はカッとすると、外して持って居た赤い襷で権次の顔をピシリと叩きました。
練絹のような美しい膚が、急に茜さして、恐ろしい忿怒に黒い瞳がキラリと光るのさえ、お駒の場合にはたまらない魅惑です。
「お駒さん、腹を立てるのも尤もだが、これには深いわけがある、落付いて聴いてくれ」
「誰が落付いてなど居るものか、犬にでも食われて死んで了うが宜い」
お駒がサッと立上るのを、権次は裾を掴んで引戻しました。
「小唄の文句の通りだ、俺もこんな非道な事を言うより、犬にでも食われた方が増しだよ」
「何をするのさ、離しておくれ、人の裾なんか掴んで、気障でないのだけがお前の身上だと思ったら――大きな声を出すよ」
「あ、存分に張り上げておくれ、お駒、俺は袋叩きにされて放り出されても怨みはしない、お前が相沢様と切れて、後藤の小倅のところへ切り込んでくれさえすれば、自慢じゃ無いが、痛い腹位は切っても宜いよ」
振り上げた権次の顔は、妙に突き詰めた真剣さに硬張って稀代の醜怪な潮吹も、もう笑える人相ではありません。
「何んだとえ?」
「誰も聴いちゃ居ないか、お駒さん、皆なブチまけて話そう、これは勘定奉行矢部駿河守様の指金だ」