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くろいはたものがたり

黒い旗物語

小川 未明

「日本少年」1915(大正4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,583 字 · 10 页

青空文庫

ある夜のこと、海の響きが常よりまして、空怖ろしく鳴りとどろきましたので、人々は、なにごとか起こるのではなかろうかと不安におののき、夜の明けるのを待ちました。ほのぼのと、夜が明け放れると、人々は浜辺にきて海をながめました。そして顔の色を変えてびっくりいたしました。

「あのいやな色をした船は、どこからきたのだろう。」

と、一人はいって、沖のかなたに見えた船を指さしました。

「あの不思議な黒い旗をごらんなさい。いったいあの船はどこからきた船でしょう。」

と、ほかのものがやはり沖をながめていっていました。遠く沖の方を見渡しますと、昨日にまして暗く、ものすごうございました。その地平線から抜け上がったように真っ赤な船が浮いていて、黒い旗がひらひらと二本のほばしらの上にひるがえっていました。

「昨夜は怖ろしい海鳴りがしたから、なにか変わったことがなければいいと思った。」

と、老人がいっていました。

「よくこの荒波の上を航海して、この港近くまでやってきたものだ。なにか用があって、この港にきたものだろうか。」

と、一人がいっていました。

「ごらんなさい。あの船は止まっています。だれかあの船はどこの国の船か、お知りの方はありませんか。