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くろいはたものがたり

黒い旗物語

小川 未明

「日本少年」1915(大正4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,583 字 · 10 页

青空文庫

」

と聞いている若者もありました。

「たぶんこの大波でゆくえを迷ったか、それとも船に故障ができてこの港に入ってきたのでありましょう。」

といったものもありました。そこでその船に向かって、陸からいろいろの合図をいたしました。けれど、その船からはなんの返答もありませんでした。

「あれはあたりまえの船と違うようだ。きっと幽霊船であるかもしれない。」

といったものもありました。そして幽霊船というものは見るものでないといって、町の人々はだんだん家の方へ帰りました。

すると不思議なことには、ちょうどその日から、町へ見慣れないようすをした十か十一ぐらいの年ごろの子供が、体に破れた着物を着て、しかも霏々として雪の降るなかに、素足で足の指を赤くして、手に一つのかごを下げて町の中を歩いていました。町の人々は顔をしかめて、そのあわれな子供の後ろ姿を見送りました。子供は町のいちばんきれいな呉服屋に入りました。

「どうか私に着物を売ってください。」

慄えた声で子供はいいました。

「おまえは銭を持っているか。」

店頭にすわった番頭は、いぶかしげな顔つきをしてたずねました。子供はかごの中をのぞきながら、