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くろいはたものがたり
黒い旗物語
小川 未明
「日本少年」1915(大正4)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,583 字 · 10 页
子供は其店の前に立ちました。そして戸を開けてのぞきながら、
「どうか私に煮えた魚と、暖かいご飯を売ってください。銭はないけれど、ここにみごとなさんご樹と、きれいな星のような真珠と、重たい金の塊があります。私はなんでも暖かな食べ物を持っていって、お爺さんにあげたいと思います。」
といいました。
すると、このときそこで酒を飲んでいた三、四人の若者は、目を円くして子供のかごと、子供の顔を見比べていましたが、
「汝は、いつかこの町へきた乞食の子供じゃないか、太いやつだ。どこからそんな品物を盗んできた。さあ白状してしまえ。みなその品物をここへおいてゆけ。」
といいながら飛び出してきました。
「いいえ、盗んだり、拾ってきたりしたものではありません。あの沖にきている船からもらってきたのです。」
と泣きながらいったのです。けれど若者らは無理にかごを奪い取って、子供をおいたててしまいました。子供はどこともなく雪の降る中を、泣きながら去ってしまいました。いつしか吹雪のうちに日が暮れてしまいました。
その夜のことであります。この町から火事が出て、おりしも吹き募った海風にあおられて、一軒も残らず焼きはらわれてしまいました。