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くろいはたものがたり
黒い旗物語
小川 未明
「日本少年」1915(大正4)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,583 字 · 10 页
「銭は持っていないが、ここに、さんごや真珠や金の塊があります。これで売ってください。私の着物でありません。お爺さんの着る着物です。」
と申しました。
呉服屋の番頭は、うさんな目つきで、輝く真珠や、あかがにの指のような赤いさんごをながめていましたが、
「どうしておまえはそんなものを持っている。おまえがそんなものを持っているはずがない。きっと偽物だろう。どこから拾ってきたか。」
「いいえ偽物でもなければ、拾ってきたのでもありません。これはほんとうの真珠や、さんごです。私を疑ってくださいますな。早く私に着物を売ってください。お爺さんは船に待っています。沖に止まっています船がこれでございます。お爺さんは、あの黒い旗の立っているほばしらの下のところにすわって待っています。」
と、子供はいいました。
「おまえのいうことは、みなうそらしい、着物は売ることができない。早くこの店の前をいってくれい。」
番頭は子供をおいたてました。
子供はしかたなしに、雪の降る中をとぼとぼと歩いて、その店の前を去って、あてなくこちらにきかかりますと、そこには食べ物屋があって、おいしそうな魚の臭いや、酒の暖まる香いなどがもれてきました。