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くろてぐみ
黒手組
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页
「じゃ、コーヒでも飲みながら、ゆっくり話そうじゃないか」
そこで、私達は一軒のカフェーへ入り、奥まったテーブルを選んで席につきました。
「今度の事件の出発点はね。あの足跡のなかったという事実だよ」明智はコーヒを命じて置いて探偵談の口を切りました。
「あれには少くとも六つの可能な場合がある。第一は伯父さんや刑事が賊の足跡を見落したという解釈、賊は例えば獣類とか鳥類とかの足跡をつけて我々の目を欺瞞することが出来るからね。第二は、これは少し突飛な想像かも知れないが、賊が何かにぶら下るか、それとも綱渡りでもするか、兎に角足跡のつかぬ方法で現場へやって来たという解釈、第三は伯父さんか牧田かが賊の足跡を踏み消して了ったという解釈、第四は偶然賊の履物と伯父さん又は牧田の履物と同じだったという解釈、この四つは現場を綿密に検べて見たら分る事柄だ。それから第五は、賊が現場へ来なかった、つまり伯父さんが何かの必要から独芝居を演じたのだという解釈、第六は牧田と賊とが同一人物だったという解釈、この六つだ。
僕は兎も角現場を検べて見る必要を感じたので、あの翌朝早速T原へ行って見た。