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くろてぐみ
黒手組
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页
若しそこで第一から第四までの痕跡を発見することが出来なかったら、さしずめ第五と第六の場合が残るばかりだから、非常に捜査範囲を狭めることが出来る訳だ。ところがね、僕は現場で一つの発見をしたんだ。警察の連中は大変な見落しをやっていたのだよ。というのは、地面に沢山、何だかこう尖ったもので突いた様な跡があるんだ。尤もそれは皆伯父さん達の足跡(といっても大部分は牧田の下駄の跡)の下にかくれていて、一寸見たんでは判らないのだがね。僕はそれを見て種々想像を廻している内に、ふとある事を想出した。天来の妙音とでもいうか、実にすばらしい考えなんだよ。それはね、書生の牧田が小さな身体に似合わない太いメリンスの兵児帯を、大きな結目を拵えて締めているだろう。うしろから見ると一寸滑稽な感じを与えるね。僕は偶然あれを覚えていたんだ。これでもう僕には何もかも解って了った様な気がしたよ」
明智はこう云ってコーヒを一口舐めました。そして、何だかじらす様な目附をして私を眺めるのです。併し、私には残念ながらまだ彼の推理の跡を辿る力がありません。
「で、結局どうなんだい」
私は口惜しまぎれに怒鳴りました。