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くろねことみ

黒猫十三

大倉 燁子

「キング 一二巻一号」1936(昭和11)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,366 字 · 29 页

青空文庫

本庄は窓際に寄って、体をかたくして坐っていた。運転手と話している会話に耳傾け、密かにまた彼の腹の中を探っているので、どこを走っているのか、そんな事に注意する余裕もないうちに、ある小さな文化住宅の前で車が停った。宮岡警部は先に降りると、木造の階段を馳け上って、玄関の扉を開けた。本庄も続いて下を向きながら、悄然と彼のズボンに従いて屋内に入った。

応接室だろうか、日当りはいいが、窓掛も何もない、頗る殺風景な部屋で、粗末な卓子と椅子が二三脚あるばかりだ。その一つの椅子の上に天鵞絨のような毛をした黒猫が丸くなって眠っていた。二人の足音に眼を覚まし、ひょいと首を擡げたが、見知らぬ客の顔を見ると、驚いて逃げて去った。

改って、向い合いに腰を下すと、本庄はまた急に不安になった。何を云い出されるのかと思って、ひやひやしながら、興奮した顔をほてらせて、彼の言葉を待っていた。

宮岡警部は相変らず軽い、朗らかな語調できり出した。

「本当にお気の毒なことをしましたね。君は、僕のおかげで、飛んだ非道いめに会ったんだ。僕は今日終日、悠然と眠らせておいて上げようと思ってたんだが。