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くろねことみ

黒猫十三

大倉 燁子

「キング 一二巻一号」1936(昭和11)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,366 字 · 29 页

青空文庫

まるで二つの黒猫がもつれ合って飛んで行くように見えた。と、殆ど同時に、真暗い銀行の廊下で恐しい格闘が始った。罵り喚めく声、入り乱れた靴の音。

「あッ。やられた!」

どたり、人の倒れる響き、続いて起る物凄い叫び声に本庄は度胆をぬかれた。逃げよう! 踵を転じた刹那、どんと背中を突かれた。

「逃げろ! 早く――」

底力の籠った聞き馴れた声、それはたしかに宮岡警部に違いなかったが、どういう訳か、一人の警官がいきなり飛び出して来て、背後から警部の胴中にしがみつき、呼笛を鳴らした。

本庄は夢中で走った。

×    ×    ×

気がついた時、彼は全身打ちのめされたように疲れ切って、ベッドの傍の床の上に倒れていたのだった。

扉の下から室内に辷べり込ませてある新聞を、習慣的に手に取って拡げて見た。はッとして、本庄は跳ね起き、眼をこすりながら、もう一度見直した。

「辰馬銀行、黒猫トミーに襲わる」

三段ぬきで書かれたその記事を見て、魂消げてしまった。彼は息をはずませながら、むさぼるように読んだ。

幸い彼の名はどこにも出ていなかったが、宮岡警部と辰馬久と、負傷した警官との写真が出ていた。