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いさましいはなし
いさましい話
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《いさましい話(いさましいはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 頁
十
ずに江戸から来たわけではないんだ」
玄一郎はすっかり支度をなおすと、もういちどかれらの顔を見まわした。それからちょっと益山のほうへ振返ったが、なにも云わずに、ゆっくりと草地を横切って去った。
十
ふりかえってみれば僅かに一年であった。
江戸を立つとき心をきめたように、できる忍耐はしとおし、そのあいだにじりじりとこの土地へ根をひろげた。その根はいま確実に生長し始めている、それは皮肉なことに二本松の決闘が機縁になった。
妻が折れてきたのもそのためだし、彼に対する青年たちの態度が全部が全部でないにしろ、眼に見えて変ってきた。
――うっかりへたなまねはできない。
こういう警戒の気持と、平生の温和な、誰にも礼の正しい彼のひとがらに少しずつひきつけられ、信頼するようすがあきらかになった。
二本松の出来事はもみ消された。十五六人と一人の決闘で、表沙汰になればかれらは唯では済まないだろう。益山は崖から墜ちて腕を挫いた。そういう話がちょっと耳にはいっただけで、やかましい評判は立たずに済んだ。
もちろん立会った人間が多いから、すべてが闇に葬られるわけはない、事実はかなりひろく知られていたとみえ、魚釣りにいったとき津田庄左衛門から注意された。