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いさましいはなし
いさましい話
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《いさましい話(いさましいはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 頁
三
淡々とした穏やかな口ぶりで、悠くりとおちついた調子で話した。
「しかしこんな気候の暴い土地でも、やはり梅が咲き桜が咲きますからな、草花なども江戸から移したのがたいていは根づいて咲くようです、――そういう点では、どうも人間のほうが辛抱が続かない、どうもすぐ腰が浮いてしまうようで、……尤も人間と草木を比べるのが無理でしょうが」
玄一郎はそれが自分を諷して云うように思えた、だが老人は唇のあたりに静かな微笑をうかべ、そんなけぶりは些かもみせずに、四辻のところであっさりと別れていった。
三
その後も役所の廊下とか、登城下城のときなどに会い、いっしょに歩いたり立ち話をしたりした。四五たびそんなことがあってからようやく、相手の名と身分とがわかった。
――作事奉行、津田庄左衛門。
玄一郎にはかなり意外だった。いつも謙遜で慇懃なものごしから、どこかの役所の支配ぐらいに思っていたのだが、それからは改めて見なおす気持になった。
津田庄左衛門は五十八歳という年よりはふけてみえる。五尺七寸あまりの痩せた躯つきで、おもながの彫刻的な顔に、いつも柔和な微笑をうかべている。動作もゆったりとおちついているし、誰に対しても丁寧で、決して高い声をだすようなことがない。