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いしがおごる

いしが奢る

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《いしが奢る(いしがおごる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,304 字 · 45 頁

青空文庫

そのうちに外島又兵衛という客が来ると、保馬はちょっと考えてから、客間へとおすように命じた。又兵衛は四年まえまで江戸邸にいた、中老佐藤市兵衛の三男であったが、こちらの年寄役、外島伊左衛門と婿養子の縁組ができて、以来ずっとこの宮津にいるのであった。――年は保馬と同じ二十六歳になる。躯は小柄で、色が浅黒く、頬骨が尖っていた。話しぶりも表情も才ばしって、なめらかで、少しも隙がないという感じだった。

保馬が入ってゆくと、又兵衛はにこにことあいそよく笑い、軽く目礼をして、ひどく親しそうに話しかけた。

「どうもしばらく、道中御無事でおめでとう」

保馬は頷いて坐った。又兵衛の狎れ狎れしさを承認するようでもなく、また拒むふうでもなかった。

「その後どうですか」保馬は巧みな無関心さで云った、「もう子供さんがあるのでしょう」

「それがまだ独身でしてね」又兵衛はすぐに答えた、「外島の娘が死んだんですよ、私が来て半年ばかり経ってからですが、それでいちどは江戸へ帰ろうと思ったんですがね、外島がどうしても放さないし、なにしろこっちは暢気なもんだから、それに、……じつを云うと見当をつけた娘もいたりするんでね」