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おれのにょうぼう

おれの女房

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《おれの女房(おれのにょうぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 頁

青空文庫

「ちょっと待って下さい、いいえ、まあちょっと私にものを云わせて下さい」五兵衛が立って来て、二人の前へいって、ずかっと坐った。

「私はね、久堅町の五兵衛てえ者です、ええ、先生のいらっしゃった長屋の差配でね、――ところでぶっつけにききますがね、唯今のお祝いの御挨拶は承りました、遠いところをわざわざ有難うございましたが、……おいでになったのはそれだけの御用ですか、ほかにもっと肝心な用むきがあるんじゃございませんか」

「まことにどうも、そう仰しゃられますと、その、甚だなんでございますが」

「いやうかがいましょう、べつに奉行所のお白洲じゃねえので、どんなことを云ったからって咎めるの縛るのなんてえことはねえ、ひとつはっきり仰しゃってみて下さい、――いいえ阿波屋の旦那、いけません、みなさんもここは私に任せて下さい、――さあ、定七さんとやら、ひとつ用むきというのを聞こうじゃあございませんか」

定七という老人は手拭を出して、額の汗を拭き、きちんと坐った膝を撫で、やがて思いきったというふうに、実はお石を平野へ戻して貰いたいのだと云いだした。

お石はあのとおりの気性で、親に相談もなく久堅町をとびだした。