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さぶ
さぶ
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《さぶ》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 頁
「そこはおれの足だ」と栄二はできるだけ用心しながら叫んだ、「もっと手前へやってくれ、そのままじゃあ足が折れちまうぜ」
「あれを見ろ、潮だ」と与平の泣き声で叫ぶのが聞えた、「潮があげてくるぞ、早く、頼むからみんな早くしてください」
栄二は全身が凍るように思った。足の甲まで浸した水が、脛まであがってきたし、脛の上に伸びてきた梃子の丸太は、そのままこじりつけられるようであった。
「足が折れる」と栄二は叫んだ、「丸太を脇へやってくれ」
「こっちの石から始めよう」と小頭の云うのが聞えた、「梃子をしっかり押えていろ」
杉丸太に強い力が加わり、栄二は脛の骨がみりみりと鳴るように感じた。
「足が折れる」と彼は叫んだ。
丸太を脇へやれ、と云おうとしたが、砂が口にはいって声が出ず、彼は激しく咳こんだ。石と石の隙間から吹き入る風が、近づいてくる波の音を聞かせた。
「助けてくれ、さぶ」と栄二はわれ知らず云った、「――おれはもうだめだぜ」
梃子の丸太に非常な重さが加わり、栄二は脛の骨の折れる音を聞いたとたんに、失神した。
十の三
――あのとき気を失ったままでいたら、それともいっそ死んでいたらどんなによかったろうか。