輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

十七

暑い時分の事なので、町はまだ宵の口であった。浴衣を着た人が幾人となく代助の前後を通った。代助にはそれが唯動くものとしか見えなかった。左右の店は悉く明るかった。代助は眩しそうに、電気燈の少ない横町へ曲った。江戸川の縁へ出た時、暗い風が微かに吹いた。黒い桜の葉が少し動いた。橋の上に立って、欄干から下を見下していたものが二人あった。金剛寺坂でも誰にも逢わなかった。岩崎家の高い石垣が左右から細い坂道を塞いでいた。

平岡の住んでいる町は、猶静かであった。大抵な家は灯影を洩らさなかった。向うから来た一台の空車の輪の音が胸を躍らす様に響いた。代助は平岡の家の塀際まで来て留った。身を寄せて中を窺うと、中は暗かった。立て切った門の上に、軒燈が空しく標札を照らしていた。軒燈の硝子に守宮の影が斜めに映った。

代助は今朝も此所へ来た。午からも町内を彷徨いた。下女が買物にでも出る所を捕まえて、三千代の容体を聞こうかと思った。然し下女は遂に出て来なかった。平岡の影も見えなかった。塀の傍に寄って耳を澄ましても、それらしい人声は聞えなかった。医者を突き留めて、詳しい様子を探ろうと思ったが、医者らしい車は平岡の門前には留らなかった。