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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

七

この料理人を見給え。生活の為に働らく事は抜目のない男だろうが、自分の技芸たる料理その物のために働らく点から云えば、頗る不誠実じゃないか、堕落料理人じゃないか」

「だってそうしなければ解雇されるんだから仕方があるまい」

「だからさ。衣食に不自由のない人が、云わば、物数奇にやる働らきでなくっちゃ、真面目な仕事は出来るものじゃないんだよ」

「そうすると、君の様な身分のものでなくっちゃ、神聖の労力は出来ない訳だ。じゃ益遣る義務がある。なあ三千代」

「本当ですわ」

「何だか話が、元へ戻っちまった。これだから議論は不可ないよ」と云って、代助は頭を掻いた。議論はそれで、とうとう御仕舞になった。

七

代助は風呂へ這入た。

「先生、どうです、御燗は。もう少し燃させましょうか」と門野が突然入り口から顔を出した。門野はこう云う事には能く気の付く男である。代助は、凝と湯に浸ったまま、

「結構」と答えた。すると、門野が、

「ですか」と云い棄てて、茶の間の方へ引き返した。代助は門野の返事のし具合に、いたく興味を有って、独りにやにやと笑った。代助には人の感じ得ない事を感じる神経がある。それが為時々苦しい思もする。