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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
線上閱讀牧野 信一《ゼーロン・淡雪 他十一篇(きなだむら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,321 字 · 54 頁
「やめないか。僕らは何も人の噂を聞きに来たわけじゃないぞ。もし、この人の仕事について君たち自身が不満を覚えるというなら、そのままの意見は一応聴こうぜ。」
私は二人の顔を等分に見詰めた。抗弁をしようとして御面師は一膝乗り出したのだが、自分もやはり担がれる部の補欠になっているのかと気づくと、舌が吊って言葉が出せぬらしかった。今更ここで抗弁したところで役にも立たぬと彼はあきらめようとするのだが唇が震えて、思わず項垂れていた。
「わしらには何も別段いうことはないよ。だが、だね……」
「いうことがないんなら、だが、も、しかし、もあるまい。」
「折角、面が出来あがったという晩に今更口論もないものさ。橋場の叔父御の口も多いが、酒倉の先生の理窟は世間には通りませんや、だが、も、しかしもないで済めば浮世は太平楽だろうじゃないか。あははは。」
堀田忠吉は獣医の「法螺忠」という渾名だった。私たちとしては何もこれらの人々の註文を特に遅らせたというわけでもなく、ただ方面が一塊りだったから、努めて取りまとめて届けに来たまでのことである。丁度、養魚場の金蔵なども柳下の家に集って酒を飲みながら何かひそひそと額をあつめて謀に耽っているところだった。