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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
線上閱讀牧野 信一《ゼーロン・淡雪 他十一篇(きなだむら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,321 字 · 54 頁
眠いような頭から、酒に酔った魂だけが面白そうに抜け出してふわりふわりとあちこちを飛びまわっているのを眺めているような心持だった。そのうちには新酒の蓋あけのころともなって秋の深さは刻々に胸底へ滲んだ。倉一杯に溢れる醇々たる酒の靄は、享ければあわや潸々として滴らんばかりの味覚に充ち澱んでいた。――鶏小屋の傍らでは御面師が頻りと両腕を拡げて腹一杯の深呼吸を繰返していた。彼も「酒の酔い」を醒そうとして体操に余念がないのだ。――万豊が地団太を踏みながら引き返してゆく後姿が栗林の中で斑らな光を浴びていた。線路の堤に、青鬼、赤鬼、天狗、狐、ひょっとこ、将軍などの矮人連が並んで勝鬨を挙げていた。――もともとそれらは私たちがつくった成人用の御面なので、五体にくらべて顔ばかりが大変に不釣合なのが奇抜に映った。音頭大会の日取はまだ決らないが、出場者の多くは面をかむろうということになって、日々に註文が絶えなかった。たとえこれが今や全国的の流行で踊りとなれば老若の別もないとはいうものの、まさか素面では――とたじろいて二のあしを踏む者も多かったが、仮面をかむって、――という智慧がつくと、われもわれもと勇み立った。