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みうらろうじんむかしばなし

三浦老人昔話

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《三浦老人昔話(みうらろうじんむかしばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,637 字 · 224 頁

青空文庫

桐畑の太夫

一

今から二十年あまりの昔である。なんでも正月の七草すぎの日曜日と記憶している。わたしは午後から半七老人の家をたずねた。老人は彼の半七捕物帳の材料を幾たびかわたしに話して聞かせてくれるので、きょうも年始の礼を兼ねてあわ好くば又なにかの昔話を聞き出そうと巧らんで、から風の吹く寒い日を赤坂まで出かけて行ったのであった。

格子をあけると、沓ぬぎには新しい日和下駄がそろえてある。この頃はあまり世間と交際をしないらしい半七老人の家にも、さすがは春だけに来客があると思っていると、わたしの案内を聞いておなじみの老婢がすぐに出て来た。広くもない家であるから、わたしの声が筒ぬけに奥へきこえたらしい。横六畳の座敷から老人は声をかけた。

「さあ、お通りください。あらたまったお客様じゃありませんから。」

わたしは遠慮なしに座敷へ通ると、主人とむかい合って一人の年始客らしい老人が坐っていた。主人も老人であるが、客は更に十歳以上も老けているらしく、相当に時代のついているらしい糸織りの二枚小袖に黒斜子の三つ紋の羽織をかさねて、行儀よく坐っていた。お定まりの屠蘇や重詰物もならべられて、主人も客もその顔をうすく染めていた。