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みうらろうじんむかしばなし

三浦老人昔話

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《三浦老人昔話(みうらろうじんむかしばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,637 字 · 224 頁

青空文庫

実はわたし自身もあまり雷は好きでないので、いゝ加減に通り過ぎてくれゝばいゝと内心ひそかに祈っていると、雨は幸いに三十分を過ぎないうちに小降りになって、雷の音もだん/\に東の空へ遠ざかったので、気の早い人達はそろ/\動きはじめた。わたしもやがて空をみながら歩き出すと、老女もつゞいて出て来た。かれも小さい洋傘を持っていた。

構外へ出ると、雲の剥げた隙間から青い空の色がところ/″\に洩れて、路ばたの草の露も明るく光っていた。わたしも他の人達とあとや先になって、雨あがりの路をたどってゆくと、一台の人車がわたしたちを乗り越して通り過ぎた。雨ももう止んで、その車には幌がおろしてなかったので、車上の人が彼の老女であることはすぐに判った。老女はわたしに黙礼をして通った。

三浦老人の家は往来筋にあたっていないので、その横町へまがる時には、もう私と一緒にあるいている人はなかった。往来が少いだけに、横町は殊に路が悪かった。そのぬかるみを注意して飛び渡りながら、ふと向うをみると、丁度彼の家の門前から一台の空車が引返して来るところであった。客はもう門をくゞってしまったので、そのうしろ姿もみえなかったが、車夫の顔には見おぼえがあった。