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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《三郎爺(さぶろうじい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 頁
気に入っていた和尚さんも、これでは仕方がないとでも思ったものか、彼の十三のとき、
「おぬしは、胆はあるようじゃ、が、文字の人ではないらしいで、実家へ戻れ。その方がええじゃろうよ」
と、宣告した。そのとき、彼は別に悲しくも恥しくもなかった。ちょうど、寺にもそろそろ飽きて来た時分だったので、内心ホクホクしながら、貰った飴を大切に舐り舐り、今度は一人で家へ戻って来たのだそうだ。
こんなにして、彼の少年時代はしごくのんきに、思いのままに過ぎた。
紅毛人の黒船がどこへ来たとか、誰某(だれそれ)がおしおきにあったとか、掃部様が斬られたとか、江戸は上を下への大騒動で、かりにも二本差す者は、大なり小なりに相当の苦しみにあわなければならなかった時分、平の土百姓、それも山奥の自分の領主さえ知らないような者の息子に生れた彼は山一つ彼方のことは、噂さえ聞かずに育ったのである。
私共には想像も及ばない、単純さの中に、彼のこの時分までのことは、ほとんどお噺(はなし)に近いような状態で過ぎて行った。
もう十三にもなり、わずかの文字も知り、どこかの箱屋へ年期に入ったこれから先は、だんだん「一人前」