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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

にお記しになったような事件の遠因となっているに違いない。ところが定家たちにとっては、歌は彫心鏤骨の賜物であった。頑なな匠人気質の一徹によって、その生活を釣り換えにして得たところの抒情であった。『新古今』の華麗妖艶は、定家にとってはまことに数寄ではなくして、その二十代三十代の生活を賭けたものであった。多くの廷臣たちは亜流なる故に、俊成定家の創めた体を真似て、宮廷の雅宴に列しうるを無上のよろこびとなし得たが、身を以て一体を創めた定家は、その仕事を成しとげ得た主我主義のために、人間として院の御勘気に触れた。文芸は主我の力のもとにのみ「詩」をつなぎ得るとすれば、定家の運命は悲劇であらねばならぬ。そして、その故にこそ新古今集時代の歌は、多くの工芸品を含んではいるというものの、その根柢において、芸術であり得ておるのである。院はその風流のもてあそびとして、多くの世にすぐれた御作をのこされた。それは『後鳥羽院御集』を拝見すれば判ることである。しかし、この新体を創始した廷臣たちにとっては、身を以て抒情した「詩」である所の新古今調に寄せてお詠みになった多くのお作は、帝王の風雅であり、遊蕩であらせられる。