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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
ながむれば思ひやるべき方ぞなき春のかぎりの夕暮の空 式子内親王
のように並べても、
萩の花くれぐれまでもありつるが月いでて見るになきがはかなき 実朝
花の上にしばしうつろふ夕づく日入るともなしに影消えにけり 永福門院
のようにならべて見ても、本質的なちがいは見られないのである。大方読者はみな既に感じておられるように、清和天皇から流れ出て、頼義・義家以来東国土豪の棟梁になった源氏の嫡孫は、田舎人になっていても貴族である。源氏・平家ともに持ちつづけた「都へ」の憧憬は、父頼朝の代に封禁されても、実朝の心に萌え出ないとは限らない。幕府の大世帯ができ上って、政治的に帰洛の見込みのなくなったところでは、都の文化に対する渇望が一層つよくならぬとはいえないであろう。その心が和歌を熱愛させる。和歌はすでに四百年の伝統を荷担った貴紳文芸である。この文芸に打ちこんでいった実朝の愛は、あるいは都の人たちの思い知らぬほどに一途で清純なものであったろうとも思う。それだけに『金槐集』の歌は風雅に凜々とした張りがあるのである。しかし風雅は風雅である。風雅とは文化人の「詩」ということである。