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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
相州の土屋といふ所に年九十に余れるくち法師あり、
おのづからきたり昔語りなどせしついでに、身の立居
に堪へずなん成りぬる事を泣く/\申し出でぬ。時に
老といふ事を人々に仰せてつかうまつらせしついでに
よみ侍りし
われいくそ見し世のことを思ひいでつあくる程なき夜のねざめに
思ひいでて夜はすがらにねをぞ泣くありし昔の世々のふるごと
なかなかに老いはほれても忘れなでなどか昔をいと偲ぶらむ
道遠し腰は二重にかがまれり杖にすがりてここまでも来る
さりともと思ふ物から日をへてはしだいしだいに弱る悲しさ
これらの歌に見える愛は、上にある者が下の者を包む愛である。仏教弘通のはじめ、光明皇后が自ら非人の傷を吸われたという伝説の生れた、その愛である。京都の中にいて、水の漏れるような隙を鵜の目でさがしつつ、儕輩を押し仆して官位の競望に憂き身をやつした中流公家の心労からは、生れ出ることのない大慈悲心である。その証拠にはこうした歌は西行にも俊成にも定家にも一首として生れ出はしなかったのである。こうした慈悲心が窮極するときに、
建暦元年七月洪水漫レ天、土民愁嘆きせん事を思ひて、
一人奉レ向二本尊一聊致二祈念一と云