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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

の舜典にあるように、言を永くすることである。『説文』には詠也とあって、言を永くするを一字にあらわせば詠である。さて同じく詠ずるのでも、そこに差があって、『詩経』の魏風の疏によると、楽器にあわせて詠ずるのが歌、伴奏なしで詠ずるのが謡であるといってある。歌謡といえば、だからすべてのうたううたを包括することになる。これを要するに、歌はうたうという日本語にちょうどあたっているのであって、しかもその当時は、日本古来の歌のうたい方として、和琴を伴奏に使うことがほぼ法式のようになっていた。地方などではいざ知らず、宮廷関係ではまさにそうだったのである。実例はいくらもあるが一つ挙げて見ると、『万葉集』巻八に、

時雨の雨間なくな降りそ紅に匂へる山の散らまく惜しも

という歌がある。これは天平十一年冬十月に光明皇后の営まれた維摩講においてうたわれたもので、終日大唐楽や高麗楽のような舶来の大管絃楽の演奏される間にまじって、うたわれたのであった。そして特に琴を弾いた人は、市原王と忍坂王とで、うたったのは田口朝臣家守ほか十数人であったと記されてある。こんなわけで、日本語の歌は楽器伴奏でうたわれるものというのが、その頃の宮廷関係の人たちの常識であり、日常目に見、耳に聞くところであった。