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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

とはいえ、関東の意況を考えれば難しいといって、進退に窮したりもした。佐渡院(順徳院)が撰集の沙汰を聞し召された由だが、もし御製を載せ奉るなら、一存にせず、必ず相談せよと某有力者から仰せを蒙ったことも日記へ書いている。

『明月記』を読んでいると判ることであるが、定家は神経質で立身出世を希いつつ権力者の意向に兢々としていた男だが、自己の芸道にかけては上皇の御心に楯ついて「傍若無人、ことわりも過ぎたりき、他人の詞を聞くに及ばず」と嘆声を発せしめ奉ったほどに強情で、己の判断力に固執した人物であることを考えると、彼は権力と己の芸術心との間に煩悶懊悩した上で、三上皇の御製を採ったのでないかと思う。道家・教実が百首も切り棄てたということは、『百練抄』に載っているのだが、これは最も信ずべき史書であるから、事実に違いない。そして、佐渡院のお歌を入れるなら相談せよという仰せがあったという定家の日記の言葉と照し合せて考えると、定家が採った御製を道家・教実(両人ともそのときは前関白)の所存によって削ったのだといえそうである。これは別に定家を庇う意味でなく、これが定家にとっては窮して通ずる唯一の道であったのだろうと想像されるのである。