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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

恵心僧都作の天台大師和讃の発端、

帰命頂礼大唐国

天台大師ハ能化ノ主

仏ノ使ト世ニ出テ

一乗妙法宣ベ給フ

眉ハ八字ニ相分レ

目ニハ重瞳相浮ミ

妙慧深禅身ヲ厳リ

仏ニ殆ド近カリキ

を切って、『梁塵秘抄』の僧歌の中に採られた今様、

天台大師は能化の主

眉は八字に生ひ別れ

法の使に世に出でて

殆と仏に近かりき

などの幽玄調を見ても、また仏歌の中の一首

仏は常にいませども

現ならぬぞあはれなる

人の音せぬ暁に

ほのかに夢に見え給ふ

の哀怨調を味わっても、これらの方が漢語調からの脱化を先へものにしていることが感じられる。大原三寂の一人唯心房寂然は、『唯心房集』に四十九首の創作今様を残したが、それは多く朗詠の句の翻訳である。一例だけ挙げて置けば、

蘭省に花の匂ふ時

錦の帳をぞ思ひやる

香炉峯の夜の雨に

草の菴は静かにて

は有名な白楽天の

蘭省ノ花ノ時錦帳ノ下 盧山ノ雨ノ夜草菴ノ中

である。そして、この同じ句から俊成の歌、

むかし思ふ草のいほりのよるの雨に涙な添へそ山ほととぎす

も出てきている。漢詩と和歌との対立が、やまとうた意識発生の契機であったことは、すでに序説のところでかなり叮寧に触れてきたところであるが、今や和歌文学は、この対立を融合させることによって、創作的詩歌の中に涸れようとする「詩」