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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

あの混沌とした建武中興瓦解後の京都では、生活を守るには数寄の生活のほかなかったであろう。かかる人々は政権争奪から逃れて、架空の小宇宙をその精神生活の中に建立するのである。

禅は流行し、禅僧は多くダンディーである。そして宋元の文物が流入する。諸君はふと連想されるかも知れぬ。宋画の流行と、東山時代の水墨画の大成を。何故に宋画は愛されたか。そしてことに、霧の中でものを見た牧渓の絵、支那では第一流の本格的画家とは少し別の牧渓、その牧渓が何故当時の日本で宋画の代表の如く学ばれ出したか。そこに私は、『玉葉』『風雅』の叙景歌を成立せしめた、数寄者の抒情を思いあわせるのである。この叙景歌を成さしめた生活と、その生活の上において、なお喪失しなかった「詩」精神とが、霧中にものを見る牧渓の水墨画に「詩」を掴んだのであろう。茶室が水墨画をかけながら、短冊や色紙に和歌の古筆を用いる消息が、同じことに関係しはしないかと思う。

そして、和歌文学は、これを限りに新しい詩を生む力を失いはてる。王朝四百年が持ち越した和歌は、『風雅集』において、「詩」の新種の最後を出しつくしたといってよい。