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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
少くとも明治以前においては、というよりも江戸時代以前においては、漢文学の魔力と相剋していた故に、日本語の歌は、短歌という前に先ず和歌であったのである。ところで憚らずにいえば、私は今一首のよい歌を作ろうとする欲求のほかに、日本の文化の歴史をはっきりと知ることの欲求が生れていることを感じている。文学か歴史かである。そして、私が今中世の和歌について一つの鳥瞰をしようとする意図もまた、歴史を知ることの欲求にゆすぶられてのことである。そして、こうした意欲は、実をいうと、単なる過去の事実を事実として知ろうとする、いわば博識への憧れとは全く縁のないものであって、現代文化の対面している情勢への見透しのためであり、自分の心に萌え出しつつある傾向がどのようなものであるかを自覚するためのものであるにほかならない。そうした意味で、この鳥瞰もまた、実は現代短歌の動向をはっきりと知りたく思う心持に結びついているのである。さてしかし、とにかくに、和歌という観念の発生の当初から、和歌は以上に考えたようなものとして自覚され、把握されていた。そして、勿論平安末期中世初期においても、和歌は右のようなものとして承け継がれた。