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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

なかなかに思ひ知るてふ言の葉は問はぬに過ぎてうらめしきかな

お察し致しますという貴女の御言葉はかえってつらいという詞には、のり越えられぬ柵の体験をひびかせている。

よしさらば涙の池に身をなして心のままに月をやどさむ

駄々っ子のような捨て鉢な態度。

葉がくれに散りとどまれる花のみぞ忍びし人に逢ふ心地する

残んの花の歌で恋歌ではないであろうが、忍びし人に逢う心地に、生身の心の温かみを感じさせるのである。

うとくなる人を何とて恨むらむ知られず知らぬ折もありしを

こうした歌の出来る人は、恋も知らずに大人になって、歌会の席上恋の歌題を出されて、昔読んだ物語の中の場面などを思いうかべながら蕩冶な感じを歌にまとめようとした多くの人々に比べて、まるで別な精神の径路を歩いていた人に見えるのである。

西行ははじめから行いすました世捨て人ではない。実人生への敗恤と、それによって交換し得た文学精神の不逞の自信とで、内心の動揺をなかなか処理しきれなかった人のようだ。出家当時は京都にいたり、三十くらいになってから熊野や高野へこもったりしたらしいことも、それを暗示するものかもしれない。だから西行といえば、花鳥風月を友として悟りすました人のように思うのはあたらないので、花月につけても傷心の歌をうたったのである。