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かかこうしゅ

中国の怪談(二)

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《中国の怪談(二)(かかこうしゅ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,926 字 · 225 頁

青空文庫

陳は大事をとって動かなかった。騎馬の後から男の駈けてくるのが見えた。それは馭卒のようであった。陳はその馭卒の方へ往って、

「今、通ったのは何方です」

と訊いてみた。馭卒は言った。

「あれは西湖の王様じゃ、首山に猟をなされておるところじゃ」

陳は自分がそこへ来た故を知らして、そのうえ飢えていることを話した。馭卒は裏糧を解いて食物を分けてくれて、そして注意した。

「遠くの方へさけなくちゃいけない、車駕を犯すと死刑になるからな」

陳は懼れて従僕を伴れて山を走りおりた。山の麓の林の中に宮殿のような建物がちらと見えた。陳は寺だと思ったので、その方へ歩いて往った。周囲に白亜の垣をめぐらした建物で、渓の水が流れ、朱塗の門が半ば啓いて、それには石橋が通じていた。門の扉にのぼって中を窺いた。それは大小の建物が雲に聳えて王宮の庭のようであった。陳はそこでまたこれは貴族の庭ではなかろうかと思った。

陳はためらいためらい入って往った。花の咲いた藤が一面に這うて、花の香がむっと匂うてきた。曲欄を幾まがりか折れて往くとまた別の庭があって、枝を垂れた数十株の楊柳が高だかと朱の簷を撫でていた。