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かめんのきょうふおう

仮面の恐怖王/電人M

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《仮面の恐怖王/電人M(かめんのきょうふおう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 153,590 字 · 308 頁

青空文庫

ですから、美術室の三人も、そのことはすこしも知らなかったのです。

それにしても、約束の十時のまえに、黄金仮面や部下のものが片桐さんのうちから逃げだしたのは、なぜでしょう。これには、いったい、どんなわけがあったのでしょうか。

美術室の中では、片桐さんとふたりの書生が、しんぼうづよく見はりをつづけていました。

もう十時が近づいてきました。シーンとしずまりかえった部屋の中に棚の置き時計の音だけが、カチカチ、カチカチ聞こえています。その時計の針が十時十分前をさしました。カチカチ、カチカチ、時間は休みなく、すすんでいきます。

五分前です。……三分前です。

三人はいいあわせたように、むこうの壁ぎわに立っている、おとなのからだほどの大きさの金色の仏像をみつめました。

国宝のぼさつ像です。奈良朝の傑作ということですが、まるで生きているように、よくできています。やさしくおだやかな顔、ふっくらしたからだ、それが金色に、こうごうしく、かがやいているのです。

恐怖王は、こんな大きな重い仏像を、どうしてぬすみだそうというのでしょう。もう時間は一分しかありません。いま十時一分前なのです。