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いせのまき
伊勢之巻
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《伊勢之巻(いせのまき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,617 字 · 35 頁
」
「まあ……」
黙ってしばらくして、
「さあ。」
手を中へ差入れた、紙包を密と取って、その指が搦む、手と手を二人。
隔の襖は裏表、両方の肩で圧されて、すらすらと三寸ばかり、暗き柳と、曇れる花、淋しく顔を見合せた、トタンに跫音、続いて跫音、夫人は衝と退いて小さな咳。
さそくに後を犇と閉め、立花は掌に据えて、瞳を寄せると、軽く捻った懐紙、二隅へはたりと解けて、三ツ美く包んだのは、菓子である。
と見ると、白と紅なり。
「はてな。」
立花は思わず、膝をついて、天井を仰いだが、板か、壁か明かならず、低いか、高いか、定でないが、何となく暗夜の天まで、布一重隔つるものがないように思われたので、やや急心になって引寄せて、袖を見ると、着たままで隠れている、外套の色が仄に鼠。
菓子の色、紙の白きさえ、ソレかと見ゆるに、仰げば節穴かと思う明もなく、その上、座敷から、射し入るような、透間は些しもないのであるから、驚いて、ハタと夫人の賜物を落して、その手でじっと眼を蔽うた。
立花は目よりもまず気を判然と持とうと、両手で顔を蔽う内、まさに人道を破壊しようとする身であると心付いて、やにわに手を放して、その手で、胸を打って、がばと眼を開いた。