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いせのまき
伊勢之巻
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《伊勢之巻(いせのまき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,617 字 · 35 頁
六
「はッ。」
六
やがて入交って女中が一人、今夜の忙しさに親類の娘が臨時手伝という、娘柄の好い、爪はずれの尋常なのが、
「御免遊ばしまし、あの、御支度はいかがでございます。」
夫人この時は、後毛のはらはらとかかった、江戸紫の襟に映る、雪のような項を此方に、背向に火桶に凭掛っていたが、軽く振向き、
「ああ、もう出来てるよ。」
「へい。」と、その意を得ない様子で、三指のまま頭を上げた。
事もなげに、
「床なんだろう。」
「いいえ、お支度でございますが。」
「御飯かい。」
「はい。」
「そりゃお前疾に済んだよ。」と此方も案外な風情、余の取込にもの忘れした、旅籠屋の混雑が、おかしそうに、莞爾する。
女中はまた遊ばれると思ったか、同じく笑い、
「奥様、あの唯今のお客様のでございます。」
「お客だい、誰も来やしないよ、お前。」と斜めに肩ごしに見遣たまま打棄ったようにもののすッきり。かえす言もなく、
「おや、おや。」と口の中、女中は極の悪そうに顔を赤らめながら、変な顔をして座中をすと、誰も居ないで寂として、釜の湯がチンチン、途切れてはチンという。
手持不沙汰に、後退にヒョイと立って、ぼんやりとして襖がくれ、