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しょしゅうかいひんき

初秋海浜記

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《初秋海浜記(しょしゅうかいひんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,606 字 · 8 頁

青空文庫

それらの霧と、青い空と、黒々とした松林との間は、凡て茫とした仄白い明るみで、そよとの風の流れもない。そして一面に露の玉が、真珠の色をなして結ばれている。殊に庭の小松の上には、枝という枝にみな、露の玉をつらねた蜘蛛の巣が、きらびやかに懸っている。

私は驚いてその蜘蛛の巣を眺めた。今迄気付かなかったのが不思議なくらい、松一杯に蛛蜘の巣だった。庭の松ばかりでなく、傍の小松の原もみなそうだった。蜘蛛の姿は見えないが、経二尺くらいのから掌の大きさほどのまで、大小さまざまの網目が、綺麗に露をつらねて重くたるんでいる。

太陽はなかなか昇りそうにない。霧は動かない。蜘蛛の巣も動かない。私もじっと佇んでいた。そこへ旅館のお上さんが来て、雨戸をすっかり繰ってくれた。室の掃除の間に顔を洗うと、間もなく朝食の膳が運ばれる。

食後の身体を縁側に置いていると、近くの漁夫、六弥という六十の上になる老人が、半白の眉を笑み動かして、跛をひきひき、一升壜を下げてやって来た。

「今日はひとつ、伝馬船で投網に案内すべえと思ってるが、旦那……。」

声と一緒に酒の匂いがぷーんとする。

「朝っぱらから、いい景気だね。