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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣難女難(けんなんじょなん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 頁
「あ……」
烈寒の中に立って、氷の衣を着た新九郎は、思わずブルブルと身を顫わせた。
「寒いか、馬鹿者めが、剣道の家にある者が、そんな油断でどうするのじゃ、気をつけいッ」
「はい、ご教訓のほど身に徹してござります」
「早く汲み直して来い」
「唯今」
と新九郎が、慌てて汲みかえたのを持って行くと、再び、耳をつき破るような気合、はッと思う間もあらばこそ、溝板の凍った上へ、骨の挫けるほど、ドスンと投げ飛ばされてしまった。
「あはははは、こいつは所詮ものにならぬわい」
梶新左衛門は聞えよがしに嘲笑して奥へ入ってしまった。その後ろ姿をきッと睨んだ新九郎は、眦に紅をさいて、
「ち、畜生ッ……」
と悲痛な声を唇から洩らしたが、雄敵鐘巻自斎の名をふと脳裡に描くと共に、彼はその誤まっている怒りを知って、
「梶様、忝のうござりました」
両手をついて、密かに伏し拝んでいたのであった。彼はこうして梶新左衛門の峻烈な鍛えをうけ、夢寐の間にも鐘巻自斎の名を念頭に描いて、血の出るような修行をつづけていること一年余月、やっと、道場の床へ月に三、四度は上ることができるまでになった。
ある日、一人の剣客が小野忠雄をこの道場に訪ずれてきた。