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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《剣難女難(けんなんじょなん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 頁

青空文庫

三

その姿を見ると一緒に、

「投げ槍、投げ槍」

と沸きあがった群集のかけ声、

「叡山流しッかり!」

「飛び入り! 構わねえから打ち込んで三方の小判をこっちへふり撒いてくれ」

ワーッ、ワーッという熱ッぽい声に浮かされた見物は、木戸銭なしの賭け試合に時間を忘れて揉み合っている。

三

どこかの町道場の門下か、あるいは旗本の子弟でもあるらしい三人組の若侍は、噂の賭け試合に奇勝を博さんものと意気込んで来たが、小六の投げ槍の手練に遭って、入り代わり立ち代わり、たちまち無残な敗れをとり、あたら一両二分の金を巻き上げられた上に、すごすごと逃げるが如く帰ってしまった。

潮時はここぞとばかり、客呼びの源七は弓の折れで立看板を叩きながら、いよいよ喚き捲くし、いよいよ胴間声を嗄らして景気づける。すると一方から、

「退いてくれ。退いてくれ」

「ご免、ご免」

と人浪を掻き分けてきた骨節の強そうな六部姿の町奴二人、ばらばらッと幕の中へ飛び込もうとする様子なので、客呼びの源七は慌てて二人の袖を引ッ掴んだ。

「おいおい、賭け試合をするならするように、ここへ二分ずつ置いて行ってもらいてえものだ」

「やかましいやい糸鬢野郎めッ、二分や三分の端た金に吝ッたれた騒ぎ方をするな、さ、木戸銭は先にくれてやるから、こっちの対手の一角を出せッ」