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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《剣難女難(けんなんじょなん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 頁
――青々とした月代が、見る間に綺麗に剃り上がった。髷は根元を紫紐でキリッと結んで、ふっさり後ろへ切り下げにした。
そこへ、どかどかと五、六人の百姓が、喚きながら駈け込んで来たが、新九郎の姿を見て、
「おおお武家様がいた。お武家様がござらっしゃる」
と口々に云った。中の一人は新九郎の足許へ平つくばって、
「お見かけ申してお願えがごぜえます。この村の者でがすが、今向うへ行く三人連れの侍がありますだ。そいつらは、この先の斑鳩嶽に巣を喰っている山賊も同じような悪郷士で、私どもの娘を二人召使に寄こせと、抜刀で脅して山へ引ッ張って行こうとするのでがす。お武家さま、どうぞお助けなさって下さいまし、お助け下さいまし」
とその親らしい百姓は、眼さえ濡らして騒いでいる。しかし、一人前の武芸者と見られて、哀願された新九郎は内心はッとしないではいられなかった。対手は三人の悪郷士、自分はまだ剣道のけの字も覚えのない身だ。
「そりゃ気の毒なことじゃ。よし、娘は拙者がとり戻して進ぜよう」
彼は勇敢にそう云いきってしまった。
すべては自分の腕を鍛える修行だ。今日からは、浮世のあらん限りの困苦を甘んじて受難する身だ。