輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

クルスかんのん

十字架観音

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《十字架観音(クルスかんのん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,655 字 · 27 頁

青空文庫

三

「お秋」

「それはあんまりじゃございませんか余吾之介様。天にも地にも頼る者のない私、――乳兄弟に逢った嬉しさに、ツイとりのぼせて、何を申上げたか存じませんが、これっ切りの別れでは、心残りでございます。せめて今晩は此処で、昔の話でも致しましょう」

「又来るよ」

お秋はこの上絡みつきもならず、やるせなさに身をもんで、涙ぐんでさえおりました。

「それではせめてお宿を仰しゃって下さいまし」

「本所番場町、市兵衛店にささやかな浪宅を構えておる」

「私が参っても差支はございませんか」

「いや、それは」

「鹿の子様が御一緒でしょう」

「――――」

松根余吾之介は、宵闇の路地の外に立っておりました。お秋のむせ返るような妖艶なとりなしもさることながら、本所番場町の浪宅に、淋しく留守をしておる筈の許婚、――若くて気高くて、賢い鹿の子の、清らかさを思い出していたのです。

三

「お帰り遊ばしませ」

「大層遅くなった、――鹿の子も知っておるであろう、お元の娘のお秋に逢ってな」

「まア。――綺麗な方でした、何をしていらっしゃるでしょう」

「――――」

町芸者――とはさすがに余吾之介も言いかねました。