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こくをみる
古句を観る
柴田 宵曲
線上閱讀柴田 宵曲《古句を観る(こくをみる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 166,028 字 · 333 頁
事実を知らぬ者の想像だから、これも間違っているかも知れない。
君が代をかざれ橙二万籠 舟泉
橙は御飾に用いられるので、歳旦の季題になっている。作者は現実に二万籠という橙を眼に浮べているわけではない。君が代の春を飾るべき多くの橙ということを現すために、極めて漠然たる数字を持出したのである。二万と限ったのも恐らくは調子の関係から来たので、中七字であったら更に他の数詞に替えたかも知れぬ。算術の問題ならば、一籠いくつとして総計どの位になるかというところであるが、「李白一斗詩百篇」や「白髪三千丈」の国でないだけに、大きく見せた二万という言葉も、それほど驚くべき感じを与えないように思う。
西鶴の『胸算用』に橙のはずれ年があって、一つ四、五分ずつの売買であったため、九年母を代用品にして埒を明けた、という話が出ている。これを二万籠の方に持込めば、また一つ数学の問題が殖えるわけであるが、それはわれわれの領分ではない。二万籠の橙の量は、常人の想像以上に属する。この数字は文学的形容として、なるべく軽く見なければならぬが、元禄の句としてはやや奇道を行くものというべきであろう。