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きらこうずけのたちば

吉良上野の立場

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《吉良上野の立場(きらこうずけのたちば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,369 字 · 24 頁

青空文庫

思慮のない気短者を相手にしたのが、こちらの不覚だった。まるで、蝮と喧嘩したようなものだ。相手が悪すぎた」

「まったく」

「内匠も内匠だが、家来がもっと気が利いていれば、こんな事件にはならないのだが。わしは、迷惑至極だ。斬られた上に世間からとやかくいわれるなんて。こんな災難が、またとあるか」

医者が次の間から、

「あまり、お喋りになっては」と注意した。

八

上杉の付家老、千坂兵部が、薄茶を喫し終ると、

「近頃、浅野浪人の噂をおききになりましたか」と、上野にいった。

「どんな?」

「内匠頭のために、御隠居を討つという」

上野は笑って、

「何でわしを討つ? 内匠頭に斬られそこなった上に、まだその家来に斬られてたまるか」

「なるほど、内匠頭が切腹を命ぜられたのは自業自得のようなもので、恨めば公儀を恨むべきで、老公を恨むところはないはずですが、ただ内匠頭が切腹のとき、近臣の士に、この怨みを晴らしてくれと遺言があったそうで、家臣の者の中に、その遺志を継ごうというものが数多あるそうで……」

「主が、自分の短慮から命を落したのに、家来がその遺志を継ぐという法があるものか」