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みょうじのはなし
名字の話
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《名字の話(みょうじのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,823 字 · 46 頁
昔は一戸の人口が百にも達した
公卿華族の家名はことごとく京都の地名
に限るかのごとき思想を生じたのであります。
昔は一戸の人口が百にも達した
元来日本の家の制度は今日稀に飛騨の白川などに遺っているごとく、一戸の人口が非常に多いものであったのであります。これは古代戸籍の制度の影響もあって、複雑な問題でこの際述べることもできないが、奈良の正倉院に残っている大宝時代の諸国の戸籍などを見ると、普通の百姓でもって一戸の人口が奴婢までも併算すれば、八九十から百に達するものも少なくないのであります。そしてこれらの一族が一つの大屋の下に、枕を並べて眠っていたかというに、これはとうてい想像し得べき事でないので、一人一人がそれぞれ労働をするのに、西に東に南に北に、二十町三十町と出て行って耕作をしなければならぬ。随って広く山野の間に住宅が散在しておって、たとい他人は正当の氏を呼ぶとしても、家族相互の間では今日村々で中屋敷とか新屋敷とか呼ぶごとく、または日本橋辺で室町の御宅、小網町の旦那というように親類を呼ぶごとく、個々の別宅に何か名をつけておかなくてはならぬようになったのであります。
公卿華族の家名はことごとく京都の地名
これが武家発生時代、すなわち地方豪族が開墾の利益を壟断した八幡太郎の頃になると、遺産相続の問題もこれに加わって、いよいよもって一家に属する個々の住宅が殖え、随って名字に居住地を