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みょうじのはなし
名字の話
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《名字の話(みょうじのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,823 字 · 46 頁
一つの物体は一族を統括し個々の変化が各家を表わす
戦争の盛んな時代には、何でも紋はきわめて目立ち、かつ特色のある無風流なものを選んだのであるが、今日になってはあまり書きにくいとか、あまりに不細工だとか、はなはだしきは汚れやすいとか剥げやすいとかいうために、だんだんと世間にあり触れた紋の方へ移って行く傾向がある。私の家の紋は、以前は丸に行書の大の字であったものを、五六十年以来女の紋に向かぬという理由から、五つの大の字を花の形に組み合せた紋に変更したため、世間によくある松葉桔梗の紋と、ほとんと同じになってしまいました。
一つの物体は一族を統括し個々の変化が各家を表わす
右の次第であるから、今日人の背中を見て家柄を想像することなどはまず不能となったけれども、それでもなおこの間に、多少の意味と趣味とを認めることができる。幕末の学者で栗原柳庵(信充)という人は、五人も七人も初めてのお客が訪問した時に、名札と紋所とを引き比べて「あなたが何さんですな」と言い当てたということである。
なるほど高橋とか和田とかいう名字が平凡であるがごとく、酸漿や木瓜のようなありふれた紋ではいかんともすることができぬが、何か一所、形か物体かに特色のある紋なら、自然に家の由来を仮定せしむる材料となるのである。