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みょうじのはなし

名字の話

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《名字の話(みょうじのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,823 字 · 46 頁

青空文庫

十時という名字の由来

田の周囲を田の「クロ」といい、屋敷の土居を壟と書いてグロと読む例などを思い合せると、越中の石黒もまた床次と同じで、境に石塚を築いて地鎮の祭をした遺風を示すものといって良いのである。

十時という名字の由来

また自分の友人で十時君という人がある。これは立花伯家の重臣で戦国以来武名の轟いた名家である。この家号も文字からは意味を解することはできぬが、自分の判断では十時の「トキ」は戸木すなわち門木の義で、境の入口に神を祭る神木を意味するものである。諸国に女夫石があれば女夫木があり、子持石があれば子持木があるごとく、石の代りに天然の樹木を用いることはきわめて普通の例である。しこうして「トトキ」の「ト」は「遠」の義で、「遠戸木」はまた「近戸木」に対する語である。遠戸と近戸は近世の語でいえば大手と搦手であって、関東地方では遠戸神・近戸神という神様が無数にある。奥羽の方へ行けば近戸森、遠戸森と変形する。伯爵藤堂家は近江から出た家であるが、この「トウド」もまた遠戸神の祭場のことである。これをもって見れば、わが尊敬する十時さんは、その御先祖がやはり床次さんと同じく、ある荘園の境端外来の悪神を防ぐに必要なる地点に、守備兵かたがた開墾を始められた家であろう。