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めいきょくけっていばん
名曲決定盤
野村 あらえびす
線上閱讀野村 あらえびす《名曲決定盤(めいきょくけっていばん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,837 字 · 680 頁
を聴かしたことがある。その頃の兼常博士は今日のごとくベートーヴェンに対して、甚だしき反感を持っていなかったものらしく、第一楽章のアダジオ――あの俗説のお月様の出というくだりが荘重に弾き進められると、籐椅子の膝を進めて、
「この通りですよ、まさにこの通りに弾くのです。ドイツの本場で聴くベートーヴェンは、こういった強いアクセントと、ロマンティックな情緒を持たせて弾くのですよ」
言葉ははっきり忘れたが、多分こんなことを言われたように記憶している。
兼常博士を引合いに出すまでもなく、ケンプのベートーヴェンは、その初期のものほどロマンティックで、そして純粋にドイツ臭かったのである。
一九三六年、ケンプはドイツ政府の文化使節として日本を訪ね、日比谷音楽堂から明治生命のホールに、幾夜かにわたって、夥しいベートーヴェンとそして少しばかりのバッハ、モーツァルトを弾いた。その時のケンプの風貌、態度、解釈、音色――あらゆる技巧の末まで、私どもはつぶさに実見して、
「想像した通りだ。ケンプの実演は、レコードで考えていたと、少しの変りもない」
思わずそう言った私の胸のうちには、油然として親しみが湧き起ったことを記憶している。