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ぜんのけんきゅう
善の研究
西田 幾多郎
線上閱讀西田 幾多郎《善の研究(ぜんのけんきゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 123,777 字 · 243 頁
終りに、無より有を生ぜぬという因果律の考についても一言して置こう。普通の意味において物がないといっても、主客の別を打破したる直覚の上より見れば、やはり無の意識が実在しているのである。無というのを単に語でなくこれに何か具体的の意味を与えて見ると、一方では或性質の欠乏ということであるが、一方には何らかの積極的性質をもっている(たとえば心理学からいえば黒色も一種の感覚である)。それで物体界にて無より有を生ずると思われることも、意識の事実として見れば無は真の無でなく、意識発展の或一契機であると見ることができる。さらば意識においては如何、無より有を生ずることができるか。意識は時、場所、力の数量的限定の下に立つべき者ではなく、従って機械的因果律の支配を受くべき者ではない。これらの形式はかえって意識統一の上に成立するのである。意識においては凡てが性質的であって、潜勢的一者が己自身を発展するのである。意識はヘーゲルのいわゆる無限 das Unendliche である。
ここに一種の色の感覚があるとしても、この中に無限の変化を含んでいるといえる、即ち我々の意識が精細となりゆけば、一種の色の中にも無限の変化を感ずるようになる。